宮崎県内においてトマトキバガの発生が確認されました
令和3年度病害虫発生予察特殊報 第3号
令和3年12月14日付けで、宮崎県病害虫防除・肥料検査センターより令和3年度病害虫発生予察特殊報第3号が発表されました。
トマトキバガは地域にまん延すると防除が難しい害虫です。生産者におかれましては、下記を参考の上、病害虫の早期発見、早期防除に努めていただきますよう、お願い申し上げます。
1 病害虫名:トマトキバガ(チョウ目キバガ科)
2 作物名:トマト
3 発生確認の経過
令和3年(2021年)12月、県内の一部の施設栽培トマトほ場において、葉の薄皮化及び白~褐色症状と果実の穿孔症状が発生し、症状が発生した葉や果実において、乳白色~緑白色でやや桃色がかったイモムシ型の幼虫の寄生が確認された。
また、当該ほ場では、暗色で細長い小さなガの成虫が確認され、トマトキバガであることが疑われたため、上記の幼虫及び成虫を採取し、農林水産省門司植物防疫所に同定を依頼し、その結果トマトキバガであることが判明した。
4 国内外の発生状況
本種は南アメリカ原産であるが、平成18年(2006年)にスペインへの侵入が確認され、ヨーロッパ、アフリカ、中央アメリカ、西アジア、アラビア半島、インド、ネパール、東南アジアに分布を拡大し、令和3年5月までに、新たに新たに台湾、中国、中央アジア諸国での発生が確認されている。
また、国内では令和3年10月に熊本県で初めて確認されている。
5 形態及び生態の特徴
(1)形態
成虫は翅を閉じた静止時で体長5~7ミリメートル(前翅長5ミリメートル弱、開張(翅を左右に広げたときの両方の翅の先端から先端までの長さ)約10ミリメートル。前翅は灰褐色で黒色斑が散在する。後翅は一様に黒色である。
幼虫は終齢で約8ミリメートルに達する。体色は淡緑色~淡赤白色で、前胸の背面後縁に狭い黒色横帯を有する。
(2)生態
ア 1年に複数回の世代交代が発生し、繁殖能力が高い。発生世代数は環境条件化によって異なり、南米では年に10~12世代発生することが報告されている。
イ 卵から成虫になるまでの期間は24~38日程で、気温が低い時期にはさらに期間が延びる。また、発育下限温度は8度と推定されている。
ウ 成虫は夜行性で、日中は葉の間に隠れていることが多い。
エ 雌は一生のうちに平均で260個の卵を産み、寄主植物の葉の裏面などに卵を産み付ける。
オ 幼虫は1齢から4齢までの生育ステージがあり、4齢幼虫は土中や葉の裏面で蛹化する。
(3)被害
トマトにおいて、葉では内部に幼虫が潜り込んで食害し、葉肉内に孔道が形成される。食害部分は表面だけが残って薄皮状になり、白~褐変した外観となる。果実では、幼虫が穿孔侵入して内部組織を食害するため、果実表面に数ミリ程度の穿孔痕が生じるとともに、食害部分の腐敗が生じ、果実品質が著しく低下する。
(4)寄主植物
トマト、ナス、タバコ、バレイショなどのナス科植物が主要な寄主植物であるが、マメ科のインゲンマメも寄主植物として確認としてされている。
(5)その他
海外では、ピレストロイド系やジアミト系などの殺虫剤に対する抵抗性を獲得した個体群の発生が報告されている。
6 防除対策
(1)現在、トマトキバガに対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条第1項に基づく措置として、別紙(PDFファイル:221.2KB)に記載された農薬による防除を行う。なお、薬剤防除にあたっては、薬剤抵抗性の発達を防ぐため、系統の異なる薬剤のローテーション散布を行う。
(2)ほ場をよく見回り、見つけ次第捕殺する。
(3)除去した被害株や被害果などを野外に放置すると、それが発生源となり、周囲に拡散する恐れがあるため、除去する場合は、薬剤を散布し、寄生した成幼虫が死滅したことを確認して、速やかに土中に深く埋却する。または、ビニール袋等に入れて一定期間密閉し、寄生した成幼虫をすべて死滅させ、適切に処分する。
(4)トマトキバガの発生が疑われる場合は、総合農業試験場病害虫防除・肥料検査課(病害虫防除・肥料検査センター 電話:0985-73-6670)に連絡する。
宮崎県 トマトキバガ啓発資料(PDFファイル:581.4KB)
(別紙)トマトキバガに対しては以下の農薬を使用して防除を行ってください(PDFファイル:221.2KB)
<お問い合わせ先>
電話 0985-73-6670 ファックス 0985-73-2127
更新日:2021年12月28日